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―――――ばつん。
寝ていた僕を不愉快な音が響いて目を覚ます。
「・・・っ」
僕は顔を歪ませる。
ばつん。
くそ、なんなんだよ?
ばつん。
「っ、また、来た・・・」
ばつん!
「ぁ・・・っ!」
思い出しては、消える消える消える消える消える消える消える消える消える消える。
どんどん消えていく。盗まれていく。
記憶が搾取される。
抵抗することに意味は無い。
抵抗した分だけリスクを背負うから。
7月、断城へ行ってからあれから2ヶ月。つまり今。9月。
僕だけが、餌の攻撃を2ヶ月間受け続けていた。
―――ばつん。
斬切るようなこの音は、僕の記憶が無くなっていく合図。
今また、僕が、崩壊、した。
ほとんど穴だらけの虫食いの本みたいな僕は。
僕は。
それでも餌が来るのを待った。
餌が目の前に現れるのを待った。
―――ばつんっ!
また何かが僕から抜き取られる。
何が、また、僕から消えるか。
何が欲しいんだよ。
この無い物ねだり好きめ。
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