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“歪んだ仮面”(ヒズミ)の名のごとく。
衣の顔の仮面を被った宇は、酷く皮肉げに笑って、意地悪そうに口元を吊り上げていた。
「こんな顔をしていても、服はそのままですし、下着なんかは柄パンなのですよ?―――――“亜兄様”」
衣の鈴の鳴るような声で、有り得ない発言をスラスラとこうも言われると――・・・。
「・・・精神的に意外にくるな・・・」
いらいらする。
「それが“狙い”ですので。ちなみに柄パンの私を想像した亜兄様なんか、嫌いです」
「・・・想像なんかしてないけど、少し最後の言葉はくる」
そう言い返すと、にこり。
衣の宇は衣のように可愛らしく微笑んで―――――、雄々しいファインティングポーズを構えた。
攻撃は打撃戦で変わりはないのか。
見た目から精神面への精神的攻撃・・・つまり、女である餌への対応策―――という感じか。
「筋肉も衣に化けてるから、劣化しちまってます・・・。でも―――――“小賢しい攻撃”が、パワーアップしちゃってますよ」
明らかに、わざとめちゃくちゃな敬語を使い、そう宇は宣言して―――――僕に襲いかかってきた!
パン!、ガッ、ゴスッ、がしっ、ひゅうん―――――・・・ゴッ!!!!!
刹那の間に、そんな音を聞き取った内に、いつの間にか。
――――僕は、エビ反りに頭を地面に少しのめり込んでいた。
「―――――え」
そう声を漏らす。
エビ反りになった僕を意地悪そうな衣の顔が見下していた。
それを視認している内に、頭に激痛が走る。
右腕、左手首、鳩尾、ついでに腰―――と出血は頭だけ。
「右腕への攻撃のフェイントから、左手首を固定して、即座に鳩尾に攻撃し・・・後ろに回り込んで、エビ反り―――――をされたってところか?」
そう言いながら、僕は体勢を立て直す。
「冷静に分析は出来ましたようですね。ご褒美に――――次は、コブラツイストでも、かまして差し上げますよ」
意地悪そうに、そう・“歪んだ画面”(ヒズミ)の衣は笑った。
頭の血を袖口で拭って、僕は思った。
――――この野郎、本当にムカつくと。
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