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地味な攻防。継続。
身体が徐々に動くようになっていく。
“戦闘”に(身体が)慣れていく。
“戦争”に(感覚が)戻っていく。
“敵”に(心から、)○らいつく。
ヤミクモニ。ガムシャラニ。ムチャクチャニ。メチャクチャニ。ムチューニ、無我ヲモ忘レルカノヨウニ。
「――――生き物としてのっ、っ!本能はっ、盗まれてなかったという感じっ!・・・っ、ですねっ」
“歪んだ仮面”(ヒズミ)を解かない宇に容赦無く、僕は顔面に右ストレートを決めようとする。
とにかく攻めた。
だから、その癪に触る雄弁な言葉は途切れ途切れに出来るだけでも成果か。
シュギョーってやつの。
「顔を狙うなんて、亜兄様はっ、最悪です・・・って、うおっ!」
冗談すらにも耳を傾けない。また顔へ攻撃をかますが、どうも・・・。
「――――じゃあ、衣のそれを解けよっ!・・・苛つくから!“破壊”する・・・ッ!」
ここでの本能とは、生き物としての先天的能力、カミサマすらも基礎としたルールのこと。
創造の裏表。
対ではあらずの、純心なる“破壊”。
今、僕が戦えるのは、僕の“アレ”が盗まれているが、生き物としての、これがまだ在るということ―――。
破壊衝動。
これこそ本能のまま抑制しないでやればいい。
でも、なんだかんだ言っても、宇の方がやはり上手らしい。
途切れ途切れでも、べらべらと喋るし、こいつ、全ての攻撃をギリギリで避け、見切っては受け流してる。
でも、もう少しで一発くらい、決まりそう。
もう、少し―――!
そう僕が優越に浸った瞬間、酷く冷えた目が見据えた。
「―――――ああ?なんだよ、しゃらくせぇ。そんな―――頭の血が上っただけのじゃ・駄目ナンデスヨ」
自画自賛・ウヌボレんじゃネェ、そんなぼやきが聞こえた。
刹那、宇の腹への防御が揺らいだものだから、僕は空かさず、思い切り拳をのめり込ませ・・・。
―――バチんっ!
「・・・っ」
胸に激痛が走る。
“電撃”が―――走った。
倒れた。
・・・電撃?
否。こいつは、本物じゃないのに?
意識が飛びつつある、ぼやけた視界で、僕を見下ろす影は・・・。
「キューケイしましょう、亜兄様――――そんなんじゃ駄目なんだよ」
ただ、手にスタンガンを持っていた。
凶器をただ持つ宇がいた。
小賢しい。
が、そこで僕の意識は飛ぶ。
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