第1章 東京

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「そういえば、由岐哉は携帯、貰ったのか?」 「あ。そういえば貰った。」 ごそりとズボンのポケットから携帯を取り出す。 説明書はぱらりと一度目を通した後にそのあたりに捨ててきた。 「説明書捨てた!?使い方とか分かってんのか?」 「一度見れば覚える。それに鞄もないから邪魔なだけだ。」 アルトさんも持ってるのかと問えば、一応持ってはいるけどあまり使うことがないと返答された。 主に使うのは電話くらいだと小さく笑った。 バーのマスターをやっていればそうだろうとは思うが。 「じゃあ、東京10の王のこととか知ってるのか?」 「え。そんなんかいてあったっけ?」 知らない、と答えれば、書いてないけどな、と笑われた。 「東京10の王は、それぞれチェスの駒の位に分かれていて、権力にも違いがある。」 「なんだよ、それ?」 「一番強い奴はキング。キングの庇護を受ける唯一の存在が、クイーン。クイーンに就いた奴は、いまんとこ誰もいないがな。」 まあそうそう関わることがない奴らだけどな、とアルトは苦笑した。 「あとは、Rabbitだな。」 「兎?」 「兎の耳のついた黒のパーカーを羽織って、仮面をしている奴だ。東京にもルールってのがあってな、それを破った奴を罰する存在なんだよ、Rabbitはな。」 活動時間も出没場所も分からんがな、神出鬼没だし、とアルトは笑った。 由岐哉はふーん、とだけ答え、小さくため息をついた。 「バトル制度っていうのもあってな、携帯で操作して戦闘を開始するんだ。」 「へえ、面白そう」 「馬鹿いえ。バトル制度を利用しての殺人が結構多いんだ。武器は何を使用してもいいからな。」 銃でもいいのか?と問えば、銃も平気だが入手するのが困難だからめったにいないとアルトは笑った。 「バトルで得るものはないが、よく金品を取っていく奴が多いな、敗者から。戦闘開始のコールがなるまでは攻撃を仕掛けたらいけない。」 Rabbitがくるぞ、というので何処でばれるんだよそういうの、と問えば通信センターに監視されてるから、一発なんだと誇らしげに教えてくれた。
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