第1章 東京

7/59
前へ
/125ページ
次へ
アルトの案内で、2階へ向う。 階段を上ると、部屋が2つあった。 階段を上がった正面の部屋はアルトが使っているとのことで、右に曲がった突き当りの部屋を借りることになった。 部屋に入ると、白いキングサイズのベッドがあった。 ふかふかとした感触。 座るとぼすんと沈む。 ぼすんぼすんと上下に跳ね、そのまま後ろに倒れこんだ。 「はー…疲れた…」 靴をそのまま脱ぎ、その辺に脱ぎ捨てる。 もぞりと体をひねらせて、そのまま布団にもぐりこんだ。 風呂は、明日でも平気だろう、そんなことを頭の片隅に置きながら。 そしてそのまま眠りに付いた。 夢を見た。 あたりは黒い闇ばかりで、無音状態。 歩き回ってはいるが、音も立たないのだ。 おかしい。 おかしい、だが、後ろから確実に何かが迫ってきている。 その気配がある。 息を切らせるほど走る。 走っても走っても、その気配は変わらず着いてくる。 振り返ることは出来ない、それを見るのが怖いから。 「はぁ…っ、は、はっ…」 次第に、自分の足音はしないのに、着いて来るひたひたという音が聞こえてくる。 ああ、自分はここで終わる。 由岐哉はそう思った。 確信めいたものを感じていた。 由岐哉は走るのをやめ、その場に立ち止まった。 そして、ゆっくりと後ろを振り返る…。
/125ページ

最初のコメントを投稿しよう!

399人が本棚に入れています
本棚に追加