別れなんか突然に

19/21
前へ
/70ページ
次へ
「え……なんで?」  俺の率直な言葉だった。 「いや、好きじゃないかもしれん」  いやいや、今週の頭までは好きって感じだったじゃないですか。  付き合った初めの頃は絶対に言ってくれなかった好きも、最近はたまにだけど言ってくれるようになったし。 「そんな突然変わるもんなの?」  これも率直な質問だった。 「うん……」  彼女はうつむきながら答えた。俺は宙を眺める。 「友達に告白されてん……」  彼女がボソッという。 トモダチニコクハクサレタ  なんだそれ。 「わかった。てか、そんな話を笑いながら来て、言いづらそうにして言うなよ」  いつものようなハニカミ笑顔だったから、少し腹が立った。 「ごめん……」 彼女はうつむいたまま言う。 「別れの話なんだったら、ちゃんと目を見て話せよ」  少し苛立ちを抑えられず、彼女に厳しい言葉をぶつけてしまった。ほどなくして、我に返る。  この苛立ちはなんだろう。  別れ話を笑って話してきたから?  別れ話をするつもりなくせに、いつもどおりに遅れるっていう連絡をしてきたから?  一緒に寝ようと思って用意した布団が無駄になったから?  彼女を奪われそうだから?  わからなかった。でも、怒ったらいけないなって思った。少し気持ちを落ち着かせる。 「うーん。とりあえず、なんか飲もうか」  俺は立ち上がってキッチンに向かった。
/70ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加