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step1・ORIGIN
よって日本経済は非常に演繹的であると筆者は主張しています。アメリカはというと、
帰納的ィ。
そうです。13行目で述べられているようにアメリカは、…山本さん、……山本さん!
「あ、はい」
ただ漫然と脳内を通過していた音が、ようやく現実味を帯びる。
そしてやっと、先生の言葉が自分の苗字だと気づいた。
中断された授業のしらけた空気に、私は渋々教科書を開く。
先生はそれで満足したのか、授業を再開した。
ああ、つまらない。
生ぬるい時間に汚染されて、生という時間を無駄にしてしまっているような感覚。飼い殺されているような感覚。
窓の外に広がる一面の青い空を見る。
透明な青。偽物の色。
私は知っている。本当の世界は灰色であるということを。
ため息をついて、ふと目線を下におろすと、そこに広がるのは学校の中庭。
緑鮮やかな芝が植えられ、所々に白い木造のベンチが置かれている。
金持ちの中高一貫女子校ならではの風情ある景色なのだが、
「え?」
そこに一人の男が立っていた。
時代錯誤な着流しを着た、髪の長いその男は、私の記憶に無い人物だ。
基本的に、私は人の顔を覚えるのは苦手だが、ああも特徴のある人間が、記憶の端にも引っかからないほどではない。
誰もいない中庭に一人佇むその男は、その雰囲気を言い表す術を持ち合わせてはいないが、とにかく不自然な光景である。
男はふいに手を高くあげた。
そして一つ、パチンと指を鳴らす。
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