1117人が本棚に入れています
本棚に追加
そうそう、やっぱり説明しなきゃいけないだろう。
県立八十神(やとのかみ)大学附属高等学校。名前のインパクトが正直言って強い。八十神は勉強の方に結構力を入れてる県内有数の進学校である。
で、俺はその入学式の帰りだ。
適当に話をしながら町のアーケード街に入った辺りの事だった。
「――って感じなんだけど……ってあれ?」
『? どうしたの和也?』
う~ん、今日の天気予報は見事に外れたのだろう。
首筋に当たった冷たい何かは、烏の糞でもなければ何でもない。完全な水滴だった。
そして、みるみる内にコンクリートの地面は乾いた明るい色から湿った暗い色へ変色していき、茜色の太陽はあっという間に雨雲に隠れていった。
「ちょ……母さん、ゴメン。雨降ってきたから一旦切るね!」
『え? ちょっと和也!? まだ伝えて……』
……許せ、母さん。また後でゆっくり話そう。
「って言ってる場合じゃないしっ!」
どんどんと強くなっていく雨は多分、最近話題のゲリラ豪雨なのだろうか? と勝手に想像しながら俺は必死になって帰路を駆け抜けていった。
「ハァ……ハァ……う~寒っ」
僅か三分の道で深い藍色の制服がぐちょぐちょになってしまった。それはそれだけ強い雨が降っていたという証明にもなるのだが、だとしたらこれを誰に誇示すればいいのだろうか?
とりあえず、俺はため息混じりに玄関の戸を開けた。
最初のコメントを投稿しよう!