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その事を問おうと思って声を掛けようと思った瞬間……
(……うわぁ)
いや、そのメイドさんに目を奪われた。
普通に絵に書いた様な服装……エプロンドレスってヤツか? 濃いえんじ色のそういうのを身にまとっていた。その物珍しさ……ってか派手さからか、最初はそっちにしか目が行ってなかった。
腰の辺りにまでかかる結構なボリューム感のある淡い栗色の髪の毛をカチューシャで留めており、艶やかな色の唇は色白な素肌によってより強調されて見える。更に、大きくパッチリと開いた瞳は深く、優しい光を秘めており、見つめただけで吸い込まれてしまいそうだ。その整っており、しかしまだ幼さが残る容姿はもはや芸術品とも言える。
いや、人生初の一目惚れを体感する寸前だったよ俺。
フリーズしてた……ってか、まじまじと見ていたからか、そのメイドさんは不思議そうな表情を浮かべて首をかしげた。
――って待てまてマテっ!
とりあえず……
「もしもし、警察ですか?」
「…………?」
「あの、家の中に不審者が……」
「ふぇぇっ!?」
彼女は右手に握った雑巾を手離し、涙を浮かべながら凄くショックそうな表情になった。
……てか何だ「ふぇぇっ!?」って……
そう思いながらも、携帯は離さない。
「つ、通報しないで下さい! 私不審者じゃないですっ!」
「うん、だからからかってみた」
「……ふぇ?」
正直言うとツッコミ所が多すぎて無理だ。何かもう疲れるから若干のズレは受け流そう。
そう考えながら俺は携帯の画面を彼女に見せた。写っているのは何でもない、ただの待ち受けだ。
「――ホッ、よかったですぅ」
胸をなで下ろし明らかに安心しました的なオーラをかもしだした彼女。う~ん……コロコロ変わる表情が何とも言えない。
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