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演習開始のホイッスルが響く。
天候は晴れ、心地よい青空の下、グラウンドで試合が行われる。
あくまでも演習だ。学園全体には魔力干渉防護フィールドが張られているため、たとえどんな強力な魔法が飛んでこようと、死には至らない。
もう、まさに、俺のためにあるようなもんだ。
なぜなら、俺を守るのは魔障壁ではなく、生身の腕なのだから。
「先生~。 ジークが相手じゃ演習になりませんて」
ベンチ入りのギャラリーから笑いが飛び交う。
この男子名をシュルツと言い、クラスに必ず一人ないし二人いるというウザイ奴。俗にチョカリとか言う奴だ。
「足下おろそかにしてっと食われっぞ!」
負けじと、言い返す。
年が年頃なので、どうしても言い返したくなる今日のこのころです、はい。
接近して、右ストレートを繰り出す。
「おっと」
矢継ぎ早に、左フック。
もし魔法なんて存在せず、こんな格闘技の世界だったら、俺はそこそこのランクに入れただろう。
が、現実は甘くない。
俺にとって、魔術タイプの人間に距離をとられれば、その時点で試合は終了である。
「ぐあああっ」
シュルツの指から放たれる、糸状の電撃。
それらは俺の体を絡め取り、抵抗なく電流を迸らせる。
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