1st Deviant -Nail-

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  -3-  僕には、双子の妹が居る。僕と双子という意味ではなく、僕の下に二人の妹が居て、その妹達が双子という意味だ。  桜と雪という対比した名前なのだが、厄介な事に一卵性の双子なのだ。DNA上では殆ど変わらない彼女達は、似ているなんてものではない。分身したとしか思えない手の込みようで、見分けがつかず、僕は困り果てている。  しかし、中学生になってからは周囲を気遣ってか、髪の縛り方や服装等、変えられる箇所から変えていってくれた。  桜は明るい性格だった。とは言っても、雪と比べたらという話で、明るすぎず暗すぎずといった性格だ。 見た目はセミロングの黒髪で、健康的な肌色をしていて清楚だ。運動が得意で、笑顔を絶やさない彼女に可愛らしい八重歯が印象的だった。  対して雪は、桜とは違って僕に嗜好が似ている。「氷の美少女」等と称されたことのある彼女は、僕と桜以外の他人に、決して心を許さない。 人の喧騒とは無縁とでも言いたげな冷ややかな目を、いつも群集に向けている。僕と違うのは、自分を偽って人に紛れようとしない所だろう。  黒い服。長い黒髪。千鶴を見ていると、思わず雪と重ね合わせてしまう。鬱になりそうだった。
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