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僕の誤算は、対極の行動をさせたことによる大惨事の連続だ。雪にとっての優しいの反対が残酷だとは思ってもみなかった。
そもそも実験結果がどうなるかなんて、落ち着いて、一考すればわかりそうなことだった。
結果としてはそんなことになってしまったが、植え付けた思考にしろ、性格は大きく変わることがわかった。雪はもう、まともに笑うことも出来ない。
「ねぇ……この前、お兄ちゃんの彼女さんが家に来たって本当?」
「彼女じゃないよ。友達かも怪しい」
いきなりそんなことを訊かれた僕は、何故かどぎまぎしてしまった。
焦り、だろうか。とにかく千鶴の話をするのはやめてもらいたい。
「ふーん。でもさ、お兄ちゃんの部屋に入れる人って、殺人鬼みたいじゃないと無理よ。そんな人、珍しいんじゃない?」
確かに、あの現場での出会いがなければ部屋以前に家にも入れなかった。まぁ、出会う出会わないのどちらにしろ、家に入られた原因の九割は母なのだが。
僕達は電車を三つの駅を通り過ぎた駅で下車した。此処から二十分も歩けば、大型ショッピングモールを初めとする通りがある。ショッピングモールには用は無いが、その通りの店に用があった。
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