プロローグ

3/6
前へ
/8ページ
次へ
    「あ、あの……?」     前方にいる少女が、M字開脚をしながら不安げな声を漏らす。     活発そうな少女だ。 艶が輝く黒のおかっぱ頭。勝ち気そうな瞳。深緑色をしたチェック柄のスカートは、祐樹と同じ高校の制服だと識別できる。     普通ならここで、「あんた! あたしのパンツ見たでしょー!」とか叫んで去っていきそうな場面だが、祐樹の半壊した顔面を見て、ただ事ではないと思ったのかもしれない。     何せ本当に酷い。耳から煙でも出そうなくらい、顔面がパニックで染まっている。     しかし彼、津島祐樹も人間だ。時間が冷静さを取り戻してくれる。     熱くなる下腹部を力技で制止し、この危機的状況を打破するべく、頭を働かせた。     (くそっ! 落ち着け! クールになれ津島祐樹!!)     だが、前方の少女が依然としてM字開脚の状態なので、自然と目がそちらに泳ぐ。     チラッ!     チラチラッ!     チチチチチラッ!     これは、なんという僥倖なのだろうか。     ベタな展開に感謝。これが夢オチとかなら神を絞殺してやろう。本気でそう思った。     だって、縞模様のパンツ。シマシマパンツ。略してしまぱん。     何故、平仮名に変換されるかは置いといて。     思春期真っ盛りの男子にとって素晴らしい品物なのである! 悲しきかな、女性に免疫がないから尚更!     ああ、股関のファイアが全身にサンダーを――     「ちょっと」     透き通ったソプラノ。     気が付けば、前方の少女がM字開脚ではなく、女の子座りになっている。     そして、触れれば切れそうな殺人的に鋭利な瞳を作り、こちらを睨んでいた。    
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

146人が本棚に入れています
本棚に追加