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「感想は!? このパンツの感想教えてっ? ゃ~ん! 彼氏の家で遊ぶのに子供っぽいかなぁ~」
時が凍る。
祐樹の全神経も凍った。
「ねぇどうしよっ!? 彼氏とSEXに発展したらどうしよ!? キャーーッ! 照れるぅ~」
寒い。寒すぎる。
人生ってなんだろう?
「やっぱ初SEXがシマシマのパンツじゃ嫌かなぁ? あたしは可愛いと思うんだけどなぁ~」
「え、えぇ。良いんじゃないですか? なんか、うん。似合ってますよ、しまぱん」
「ほんとー? やりぃ! これで安心してSEX出来るわー!」
「あは……あはは。ですよね。SEX頑張って下さい。では僕は失礼します」
機動する祐樹。
そして地上の誰よりも速いスピードで走り去る。
涙が、冷たい冬の風と共に虚空を舞った。
痛い。朝から心が痛い。頬を切り裂くような風のせいで、顔も痛い。
この凍えそうなくらい冷たい風に、最悪の出来事というスパイスが加わり、なんとなく地吹雪の中を走ってる気分だ。
まるで風が氷のよう。氷を浴びながら走ってるみたいだ。
その氷風が、不意に口元をくすぐる。
柔らかい。言語で表現するのが困難なくらい柔らかい。
氷なのに……固いはずの氷なのに柔らかい。
だから、「初めてのキスはどうだった?」なんて聞かれたら、胸を張って「柔らかかった」と言える。
「へー、相手はどんな人?」なんて聞かれたら、
「氷」
って言える。
津島祐樹、男になった瞬間だ。彼の胸中から、先程の悲痛は消えていた。
むしろ、とても暖かな気分になっていた。
なんで?
それは、慈悲深い天からの贈り物、ブリザードキッスの甘さに酔っているから――
お・わ・り
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