第4章

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流石に、掃除機をかける体力…いや…気力はなかった。ゴミをまとめ、テーブルを拭くと力つきてしまった。 「こんなに筋肉痛になったの何年振りだろ…まだ体が軋んでる。」 コーヒーを飲みながら彼が手当てした傷を見るため包帯を外した。痛々しく擦りきれた手首は、今少し動かしたせいでまた少し血を滲ませていた。少し風を当て、消毒し傷薬を塗りまた包帯を巻いた。 そしてゆっくり立ち上がり、ベランダに立った。風が気持ち良く肌に当たり、夕闇に包まれつつある街並みが、徐々に灯りをともし始める。 「やっぱりまだ肌寒いな…」 室内に戻ろうと思った時、少しうつ向きながらこちらに向かう彼の姿を見つけた。 私は室内に戻り窓とカーテンを閉め、まだヨロヨロする体を動かし、玄関に向かった。 徐々に近付く彼の足音… 鍵が回り、思ったより長い時間がながれた後ドアが開いた。 「おかえりなさい」 私は笑顔で出迎えた。彼は驚き一瞬動きを止めた後 「ただいま…良かった…」 そう言って、力一杯抱き締めた… 「痛い…痛いよ…」 「ゴメン…嬉しくて…」 急に体を離され、私はふらつきまた彼に抱き締められた。 今度は優しく、暖かい抱擁だった…
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