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シリアも静かに涙を流しながら、ひどく優しい声で、声をかける。
まるで、天使や女神のような。
「辛かったね…」
お前に何が分かる、と普段なら反発しただろう。
けれど今のルーザーにはその言葉が染み入るように入ってきた。
「っ……」
小さく嗚咽が漏れる。
「聖域に住まう我が神、イナ…。
そして水の精霊たち。」
シリアの声が静かに響く。
それは、なぜか気持ちがいいと感じた。
「魔法契約に基づき、命じます。
全てを遮断する安らぎの空間を与えて。
暫しの間…」
シリアの呪文が唱え終わると、不思議な感覚に襲われた。
まるで泡に気泡につつまれたフワフワ漂っているような感覚。
両手を包んでいるシリアの手も暖かかった。
思わず目を閉じる。
(ゆっくり眠って――。
あなたの心の傷が少しでも埋まるように祈るから――)
遠くでシリアの声が聞こえた気がした。
その声と感覚に包まれて、ルーザーは眠りに落ちていった。
かくん、とルーザーの体が倒れる。
シリアは咄嗟に支えて、さらに魔法を唱え、ベッドにルーザーを運ぶ。
「おやすみなさい、ルーザー…」
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