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少女はルーザーが思い出したのを確認すると、続けた。
「だからあなたをここまで運んで、いろいろ小さい傷も負ってるみたいだったから、勝手に申し訳ないけど、手当てもさせてもらったわ」
「あ…悪いな…」
と言って、ふと聞き直す。
「運んだって?
君一人で俺をここまで?」
どう見ても彼女は細いし、体力や力があるようには見えない。
ルーザーを背負って移動するなんて、到底無理に思えた。
しかし彼女はあっけらかんと答えた。
「うん、そうよ」
ルーザーが言葉を失っていると、彼女は続けて言った。
「あ、私、魔法使えるの。
まだ名乗ってなかったわね。」
そう言うと、右手を差し出し、
「シリア・ランデルスよ。
セント・ウィズダムの巫女なの。」
彼女―シリアがニコッと微笑む。
ルーザーは右手をズボンで拭くと、シリアと握手をした。
「ルーザー・マテライトだ」
「ルーザー、よろしくね。」
手を離す。
「傷も魔法で塞いでおいたから。
体力までは回復させてあげられないけど。」
「いや、十分だよ。ありがとう」
「あとは…すごい汗だけど…。
外に井戸があったから水浴びてくる?」
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