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夜のざわつき
その頃、拓哉と優美は短い平和を寛いでいた。
《優美様♪お茶が入りましたよ。》
『ありがとう♪今日のお茶菓子は何かしら?』
《今日は、私が焼きましたスコーンに庭で採れたベリーのジャムと生クリームを添えてみました。》
テーブルの上に、ダージリンティーとスコーンが並べられ、貴族が楽しむアフタヌーンティーを思わせる。
《旦那様もよろしかったらどうぞ。》
「おぃおぃ、俺はついでか?」
トレーニング機器で汗を流していた拓哉がスポーツタオルで顔をふきながら歩み寄る。
『やだ拓哉!先にシャワー浴びてからにしてよぉ。』
「わかったよ、マイハニー。」
とぼとぼとシャワールームに向かう拓哉。
『今日のスコーン最高よ♪』
《有り難き幸せ♪》
『ところで、今夜の日没は?』
《7時35分かと。》
『ならば出発は7時にするわ!』
《かしこまりました。》
暗黒の夜がやって来る。
闇の中から現れるソレは、二足歩行のモノノケ。
死んで化け物と化したモノ。
いわゆる、狩られる者達だ。
寛ぎの一時に別れを惜しみつつ、拓哉と優美は支度をする。
戦闘準備。
『ジョー!ヘリの準備は整ってる?』
《バッチリ整って御座います!》
『拓哉行くわよ!』
「待ってよ優美すわん。モゴモゴッ」
拓哉は口にスコーンを頬張りながら優美の後を追う。
ヘリは二人を乗せ、ざわめきの闇夜に飛び立った。
ヘリは目的地点上空に近づく。
窓から下を覗き込むと、闇夜がうごめいている。
真っ暗で何も見えないが、全体がごそごそ動いているのだ。
『何か昨日より殖えてない?』
「優美があれだけ殺ったのにまたかよ…。」
『キリが無いわ。』
《御二人共!着陸致しますよ~!》
『了解。』
「ラジャー。」
町中がうごめくモノで埋め尽くされている為、廃ビルの屋上に着陸する。
着陸に気付いた奴等は、直ぐさまビルへと向かって移動を始めた。
『おいでになったわよ!』
「いっちょ打ち噛ましますか!」
二人がヘリのドアを開けた途端、バケモノ達が襲いかかってくる。
『消えなさい!』
バシューッ!
かざした手の平から先のバケモノは蒸発するかの様に消え去った。
その隙に拓哉が飛び降り、高く飛び上がる。
「優美に寄るんじゃねぇ!」
下のバケモノ目掛けて気が放たれると、それを受けたモノはクチャッと潰れていった。
『あら、ありがと。でも、このミンチの山を通れと言うの?』
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