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夜の間、ずっと闘い続けていた拓哉と優美は、朝になると基地へ戻り、入浴を済ませて食事をし、やっと眠りにつく。
こんな生活を17年繰り返してきた。
娘の成長を知るすべも無く。
そんなある日、娘、優菜の17回目のバースデーがきた。
いつもの様に闘い明けの午前5時頃。
『あ!?大変!!今日は優菜の大切な日だわっ!!急いであの子の執事を召喚しなきゃ!!』
血相を変えて準備をする優美。
「どしたぁ?風呂はいろうよぉ~♪」
猫なで声の拓哉は無視して慌てる優美だったが、丁度来たジョーに手伝ってもらった。
『ジョー、アナタの弟よ☆』
《はい!楽しみに御座います♪》
『我が名のもとに命令する。我が娘優菜の執事に相応しき者よ!いざここに蘇れ!!』
モクモクモクッ!
ボワンッ!
《初めまして御主人ぁ♪お呼びで御座いますかぁ~?》
……。
『何か、語尾が気になるけど…。まぁ、いっか!早速だけど、あんたは娘、優菜の執事をやってもらうわ!やり方はこうよ!』
そう言って優美は、娘、優菜の情報と、執事として受け入れてもらう方法をレクチャーした。
《了解いたしましたぁ!私メ、張り切って行ってまいりますぅ♪》
ペコリッと頭を下げ、そのまま煙りとなって携帯電話の中へ入り込み、手筈通りに事を進めるのだった。
「アイツ大丈夫かぁ?」
後から来た拓哉が呟く。
長い髪をクルッと振りながら振り返った優美。
『アナタよりは役にたちそうよ!』
小悪魔の笑顔で言う。
「優美すわ~ん!(泣)」
優美はクルッと背中を向け鼻歌混じりでお風呂へ。
《御入浴の準備を♪》
『頼むわ☆』
厳しい毎日、楽しい事などひとつもない現実の中、二人は優菜という希望を胸に、努めて明るく振る舞う。
そうでもなければ、基地内の雰囲気まで真っ暗闇に包まれそうな、そんな毎日だった。
無人と化した街だったが、朝が来るとしばしば人が現れる。
地下に身を潜めている者達。
街の生き残りだ。
幾度か基地へ誘った事もあるが、自分達の街から離れたくないのだと断られた。
だが、あの街では食べることさえままならない。
そこで朝、拓哉と優美を迎えに行くヘリと、もう一機、食料を運ぶヘリを送り込む事にした。
それを目当てに地下から出てくるのだ。
だがその姿は、夢も希望も無い、生ける屍の様にも見えた。
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