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『……今から、私の力を使って
貴方を聖龍の間に転送します』
「そんなことができるんですか?」
スフィシアはにっこりと微笑み
頷いた。
「それは助かります……あ」
賢介はそこで沙那のことを
思い出す。
一体どこにいるのだろう?
「あの……」
不意に聞き慣れた声が後ろから
聞こえてきた。
振り返ってみると……そこには
「沙那さん!?」
今まで行方不明だった彼女が、
申し訳なさそうに立っていた。
「すみません……
ご迷惑をおかけして」
「今までどうしてたんです?」
賢介に聞かれて、沙那は
少しだけ表情を曇らせた。
「ちょっと……気分が……
あ、もう大丈夫なんですが」
『二人とも揃いましたね』
スフィシアは二人を見て、
何故か淋しげに笑う。
『聖龍の間に転送します』
ふわり……
温かい風が二人を包み込む。
『どうか……
どうかアクアマリン様を……
お願いします』
これで、全て……終わるから
一人取り残されたスフィシアは
ため息を一つつくと、気温が
下がってきた空間にぽつりと
呟いた。
『もう、還っても
いいです……よね』
その場所に残ったのは
一滴の淋しげな涙だけ……
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