*15* 消える者

6/9
前へ
/209ページ
次へ
「"天地に渡りて流れし水よ 永久に続くその流れで…… 全てを飲み込む大渦となれ"」 賢介の周りに水蒸気のような ものが集まり、その形を成していく…… それは大きな渦となり、厚い氷 に衝突した。 「"メイルストローム"」 水が氷の上を流れる。 氷がコップの中の水に溶かされ ていくように 氷は少しずつだが、確実に小さくなっていく…… 洞窟内の水位が、賢介の膝まで上昇した。 大渦の水と、溶けた氷の水が 合わさり、どんどん水位が上昇 してくるのだ。 冷たい水が身体を震わせる。 それでも賢介は引かなかった。 最後の最後まで 前を向き続けた。 沙那はそっと、賢介の体を支える。 「もう少しです……賢介さん」 その言葉を受けて、賢介は氷を 全て溶かした。 急いで洞窟の中心へ、胸まで ある水を掻き分けて進む。 「ヴァンさんっ!大丈夫ですか?」 ヴァンネルは、すぐに目を開けた。 「お前、まさかあの氷を溶かしたのか?」 「……はい」 賢介が頷くと、ヴァンネルは 驚いてその場を立とうとしたが 立ち上がれなかった。 体力がもう限界なのだ。 ふと、 錯絽と柚芭の姿を探す。 しかし、彼らの姿はどこにも 無かった。 「(確かに凍らせた……ハズだが……)」 ヴァンネルは不審に思いつつも ほうっておくことにした。 もう、彼らに関わりたくはない……  
/209ページ

最初のコメントを投稿しよう!

34人が本棚に入れています
本棚に追加