*15* 消える者

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「とりあえず、大丈夫ですか? ヴァンさん」 賢介は水の引いてきた洞窟に 座り込んでいるヴァンネルに 手を差し出した。 「自分で……立てる」 ヴァンネルはその手を掴まずに 立ち上がろうとしたが、結局 立ち上がれずにその場に再び座り込む。 賢介はため息をつくと、錫丈を シャランと鳴らした。 「まったく、しょうがない人ですね……」 「……うるさい」 ヴァンネルは拗ねたように ふいっと横を向く。 賢介は錫丈に集中して何かを 念じた。 「"ヒール"」 温かな光がヴァンネルを包み、 傷をどんどん治していく。 「……すまないな」 「いえいえwこれぐらいいいで……すよっ?」 賢介は言ったそばから ふらついてその場に座り込む。 こちらも同じく体力と精神力の限界だった。 「人のこと言えないんじゃないか?」 「ヴァンさんって……微妙に トゲのあることいいますよね」 肩を落とす二人の間に、ふわり とショールをはためかせて 笑顔の少女がフローライトを 取り出す。 「はいはい、私が治して 差し上げますから。 見てのとうりまだまだ元気なのでw」 (……大魔法一回ぶっ放してたと思うんですけど、沙那さん) 沙那のどこから来るのかわから ないその笑顔を見ながら、 賢介は苦笑いした。  
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