*16* 契約

2/10
前へ
/209ページ
次へ
雫と裕明は少し寒くなってきた 洞窟の道を、奥へ奥へと進んで いた。 「あれ?」 雫は立ち止まると服の袖から 紫色の玉を取り出した。 「どうした?しずしず」 「けんちゃん達から連絡…… みたいね」 雫はそういうと、玉を目の高さ ぐらいに上げて、そのまま そっと手を離す。 するとその玉は、地面に落ちる ことなく、ふわふわとその場に 浮かんだ。 『雫さん?聞こえますか? ヴァンさんと合流しました』 紫色の玉が光り輝きながら、 賢介の音声を伝える。 「あ、ヴァンさんそっちに居たんだ」 『はい……それから、助けを 求めていたガーディアンに 会って、アクアマリンを貰いました』 雫は何故か考えこむ。 元々、声の主を助けるためと ヴァンネルを追い掛けるために この洞窟に入ったのだ。 目的は果たして……いるのでは ないだろうか? 「けんちゃん、私達まだ"気になること"があるから、 もうちょっと洞窟の奥に行って もいいかな?」 (……気になること?) 裕明は雫の言葉を不思議に思い ながら考えを巡らす。 何かがこの先にあるのだろうか 『いいですけど……何かあった んですか?』 「ちょっとね、先に外出てて」 雫はそういって玉を再び手に 取って通信を止める。 玉の輝きが無くなり、洞窟は また薄暗くなった。   「しずしず?この先に何か あるのか?」 裕明が尋ねると、雫は少しだけ 表情を曇らせて言った。 「まだ、無事ならね」  
/209ページ

最初のコメントを投稿しよう!

34人が本棚に入れています
本棚に追加