*16* 契約

7/10
前へ
/209ページ
次へ
雫と裕明が洞窟を抜ける頃には もうすっかり日が落ちてしまっていた。 裕明は木に背中を預けて 休んでいるヴァンネルを見つけ て駆け寄る。 「ヴァン……大丈夫か?」 「心配するな、ただ休んでいる だけだ」 裕明はふと、思いついて ヴァンネルにある提案をした。 「なぁ、ヴァン 俺たちと一緒に旅しないか?」 ヴァンネルはその言葉を聞き、 一瞬驚いたようだが、静かに 首を振った。 「僕には……――など要らない」 「え?」 途中で風がヴァンネルの声を 遮った。 「いや、遠慮しておく……」 「そっか……でも俺 こうやってまた会えたのは、 運命だと思うんだよ」 裕明は残念そうにしながらも、 雫たちのいる方に走っていった。 「運命……か……確かにな」 ここにいる者全てには、何かしらの運命があるのかもしれない。 だとしたら……尚更。 ヴァンネルは暗くなった空を 見上げて見た。 空には半分欠けた月があった。 シリウスが輝いていた。 その光が、彼らを照らしていた。
/209ページ

最初のコメントを投稿しよう!

34人が本棚に入れています
本棚に追加