*16* 契約

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「わんわんっ」 チョコが鳴き声をあげて裕明に 飛び掛かる。 裕明はそんなチョコをしっかり と抱き留めると、胸に抱いた。 「……チョコ、もしかして ずっと洞窟の外で待ってたから 怒ってるのか?」 「わうっ!」 裕明はチョコの頭を撫でて なだめようとするが、チョコは 首を振っては、振り払う。 と、その時 「…………」 「っうわ!?ヴァンか びっくりしたぁ……」 いきなり後ろに気配を感じて 振り返ると、そこには何故か 一本のきゅうりを持った ヴァンネルが無言で立っていた。 「わう?」 ヴァンネルはチョコにきゅうり を差し出す。 バリバリときゅうりを食べ出す チョコ。 裕明はしばらくその光景を唖然 としながら見ていた。 「あの……ヴァン?」 「どうだ……旨いか?」 なんだか軽く無視された気が するのは気のせいだろうか…… 「なぁ……ヴァ……」 「よし、いい子だ」 ヴァンネルはチョコの頭を 撫でる。 さっきまでとは違い、チョコは 嬉しそうに撫でられる。 酷い疎外感を味わいながら、 裕明は深い深いため息をついた。  
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