はじめに

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12億年前というはるかな昔この地球に、酒を造る酵母菌の先祖があらわれたのに続いてほぼ20万年前、人間(ホモサピエンス)が出現しましたが、その頃には、酵母はすでに大きな進化をとげ、糖を発酵してアルコールを造る機能をもつようになったと思われます。その酵母が、地上に落ちた、果物に自然に繁殖し、果物を発酵させました。 その後、人類は作物を栽培し収穫することをおぼえ、その貴重な食べ物と、目に見えない酵母を巧みにあやつって、酒をつくりあげました。 もちろん、まだ酵母の存在さえしらず、その概念ももたなかった当時の人々はこの発酵という不可解な現象を、すべて「神のなせるわざ」だと考えたに違いありません。 「古い文明は必ずうるわしい酒を持つ。すぐれた文化のみが、人間の感覚を洗練し、美化し、豊富にすることができるからである」(坂口謹一郎)といわれる通り、世界の民族は、独自の酒とその文化を育ててきました。それが民族間の交流によって各地へ伝播され時代とともに改良され、進歩していきました。たとえば、メソポタミアで始まったワインは、シュメール人、フェニキア人、ギリシア人、ローマ人の手をへて、穀物にはあまり適さないが果樹には良いという自然を背景にヨーロッパ全土に展開し、発展していきました。 日本は、高温多湿で豊かな四季をもち、稲穂がみのり、米を原料とした日本酒が生まれました。あでやかな日本の風土とデリケートな日本人の感性とによってこれが育てられ発達してきました。 「アルコールと栄養」(光生館)より
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