第二歩

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 そこまで書いて、ノートを閉じた。  外装は青で、サイズはB5、6mm幅、35行。  このタイプが気に入っているので、自分が持っているノートは大抵がそれだ。  今閉じたノートの表紙には、"気まぐれ日記"と銘打ってあるが、中身がそれに応じたものでないのは明らかである。  抽象的な愚痴。総合的な怒り。消極的な悩み。  そういったものが書きたくなって、今日から"気まぐれ日記"を書き始めた。  自分は、そういうのをクチに出せるような奴じゃない、だから、文章にでもして外へ放出する、そんな人間だ。  煙草に火をつけた。体内に煙を入れた。空中に時を描いた。  机の端においてあるキャラクターの置時計を横目で見て、無機質なガラスの灰皿に灰を落とす。  11:07。 窓の外には濁った月が浮かんでるんだろうな。  "現実"もこんなふうに簡単に吸ったり吐いたりできたらどんなにいいだろう?
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