第二歩

5/5
前へ
/15ページ
次へ
 ガラス戸を開けっ放しにして、兄は部屋に戻ってきた。 「ちょっと、閉めてよ」  5cmくらい戸を動かす兄。 「ちょっと閉めた」 「全部閉めて」  はぁ、と溜息混じりに戸を閉め、また卓袱台に肘をついて座る。 「空気悪ー」 「あのさぁ、翔兄の部屋じゃないんだから好きにさせて。空気清浄機あるからいいの。ってか、部屋戻ればいいじゃん」 「何でそう千宏は冷たいかなぁ」  やっぱりもう、構わないことにして、冷房の電源を入れる。  それからまたかったるい受験勉強を再開した。  何時間か経って、そろそろ寝ようかな、とベッドの方を向くと。 「……ったくもぅ」  兄が眠っていた。しかもすんごく気持ち良さそうに。  仕方ないので、隣の兄の部屋にあるベッドで寝ることにする。  兄の部屋もこの部屋も、家具や配置はほとんど同じなので、抵抗はない。  寧ろ、兄の方が綺麗に片付いているので、よく眠れた。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加