【序章】

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 原田光一(ハラダコウイチ)が、大学を卒業後区役所の区民課に勤めてから10年の歳月が流れていた。    容姿も仕事ぶりもめだたないが、真面目が取り柄で仕事もミス無く几帳面なタイプだ。  いつも通り定時に仕事を終えて、自転車で帰路に付く。  独身だが中古マンションを買い、独り身を満喫している。  これも両親が不慮の事故で亡くなった為で、ギャンブルや女遊び、酒もタバコも一切無縁な原田にとっては、金銭的には不自由していなかった。  ほんの2ヶ月前に有給休暇を取り、趣味のカメラを持ち箱根に旅行に行って来た。  部屋に帰ると異変に気が付いた、微妙に物の配置が違う……気のせいかも、しはらくほんの4日空けただけで勘違いするはずは無いと思い、貴重品やカメラなどをチェックするが、何も無くなってたりしていなかった。  気のせいだったと、その事は記憶から消え去っていた。
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