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岸は冷静に語った。
「めちゃくちゃだ。 借りて無いのに私の名前が書いて有るだけで、何故……もう私からは申し上げる事はない失礼させてもらう」
「待てよ原田さん、コーヒー位冷める前に飲んで行きな、食事も頼んでおいたからもう来る頃だ。 これからもっと酷い状態になるんだ慌てる必要はないだろ」
酷い状態? 原田は気になって席を立てなかった。 日替りランチが運ばれて来た。
「まあ食べてから話ましょや」
一言言って岸は箸を手に取り食べ始めた。 原田も食べ始めたが、大好物の揚げ物にもかかわらず余り箸が進まず半分は残してしまった。
「まあ……いずれにしろうちの方は、返済して貰いうしかないね」
岸が食後の沈黙を破り、淡々と話し出した。
「それは無理と違いますか、これを見て貰えば分かりますよ」
原田は背広の内ポケットから、手帳を取り出して岸に差し出す。
「なんだい?」
「筆跡を見てくれれば解ると……私は字を書くの下手くそなんです」
岸は手帳をパラパラめくり中を余り見もせずに、原田の方に返した。
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