第八章:奪取

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空母部隊の指揮を取るのは南雲忠一中将。 真珠湾から機動部隊を率いてきた百戦練磨の勇将である。 だが、空母を率いるというのは水雷畑を歩んできた南雲にとっては全くの畑違いだった。 先任順序という序列によって機動部隊を預かっているに過ぎない。 24日 現地時間06:23 伊号第175潜水艦 南方に張っていた網に獲物が掛かったようだ。 「聴音より発令。推進音多数を聴知。方位190度、距離5500、大型艦を含む」 「総員戦闘配置、魚雷戦用意!メインタンクブロー!深さ21!1番上げ」 伊175はゆっくりと潜望鏡深度に浮上した。 艦長が潜望鏡に取り付く。 「右50度、敵艦隊視認!!……空母3、巡洋艦2、駆逐艦5。魚雷方位盤諸元入力用意。的針30度、的速12ノット、雷速最大、駛走深度6。1番から4番全門斉射。距離3500で発射する」 「了解!魚雷管1番から4番装填急げ!!」 「潜望鏡下げ。聴音、敵駆逐艦の動きに留意せよ。針路そのまま、両舷前進原速」 「両舷前進原速!!」 伊175潜水艦は海軍大型潜水艦、通称、海大(かいだい)6型bの2番艦だ。 魚雷発射管を艦首に4門、艦尾に2門を搭載している。 安全潜行深度は85mに達する。 「距離4000!」 「発射時期近づーく!!」 「潜望鏡上げ!」 「1番から4番注水!」 発射管の前扉が開き発射管に注水が施される。 「距離3500!」 「テェッ!!」 圧搾空気により発射管から九五式酸素魚雷が滑り出し、二重反転式のスクリューを回転させ雷速50ノットで敵艦へ向けて走り出した。 魚雷は自動操舵装置により予め設定された方位に向け針路を取り、ジャイロによって姿勢を維持しながら目標へと突進する。 「第二射用意!次弾装填急げ!!」 「後方より敵駆逐艦!!急速接近中!!」 「何だと!?」 どうやら対潜哨戒用に数隻が輪形陣の外をうろうろしていたようだ。 「後部発射管5番!発射用意!!敵艦右170度、磁気信管装着、駛走深度5!急げぇ!!」 滅多に使う事の無い後部発射管室が一気に慌ただしくなる。 程なくして、5番発射管装填完了のランプが点灯する。 「5番、テェッ!!」
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