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薫は部屋に戻り荷造りを始めた。ダンボール箱の中に必要と思われるものを入れていく。CDとコンポや自分の趣味に必要なものや日用品を全てまとめる。一通りまとめ終わり最後に服を入れ始めた。
「この服は…さすがに駄目だな」
薫は服を見つめ溜め息を吐いた。薫が見つめているものとは密かに集めていたゴスロリ服や甘ロリ服。
「しばらくお別れだな…」
薫は名残惜しそうにゴスロリ服達をクローゼットにしまいパンク系の服やアクセサリーをダンボール箱に入れた。するとあるものが目に入る。
「これ…」
薫はそれをハンガーから外し袖を通そうとしたが手を止めた。
「今の私にはこれを着る資格なんてない…」
薫はそれを強く抱きしめた。すると薫の目から涙が一筋流れる。そのときだった。
コンコン
「薫入るよ?」
ハスキーボイスが薫の耳に入った。薫はその声に焦り素早く涙を拭う。
「どうぞ海翔」
ガチャ
入って来たのは先ほど言ってた薫の双子の弟海翔だった。海翔は薫と顔の造りは殆ど一緒で違うのは薫の髪の色はネイビーブルーで海翔は金髪と身長だけ。
「何してんの?」
海翔は部屋に積まれている大量のダンボール箱を不思議そうに見つめながら言った。
「あー荷造り」
「荷造り?なんで?」
海翔は薫に近寄って顔をのぞき込むようにしゃがんだ。そして悲しそうに見つめる。
「『光輝』が全寮制だって。入寮日今日の昼だから荷物準備しとけって姉ちゃんに言われた。ったく私を男子校入れるとかどうゆう神経してるんだろな」
「はぁ!?男子校って聞いてないてか薫女じゃん!」
薫の言葉に海翔は思わず叫んだ。あまりにもうるさいので薫は耳を塞ぐ。
-おまえも知らなかったのか…-
「俺が薫の代わりに『光輝』行く」
海翔の眼差しは真剣そのものだった。薫は思わず溜め息を吐く。
「無理だよ…。海翔もわかってるだろ。姉ちゃんには誰も逆らえない」
薫がそう言うと海翔は今にも泣きそうな顔をした。
「だって薫にもしも何かあったら…」
この流れから誰でも想像はつくだろう。そう、海翔は極度のシスコンである。薫は海翔の頭を撫でた。
「大丈夫男装するから」
「でも…」
口ごもる海翔を見つめて薫は優しく微笑む。
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