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「海翔わかってるだろ?私はそこら辺の男に簡単にやられない」
凛とした薫の表情を見て海翔は安心したように微笑み返した。
「そうだよななんてったって薫はあのせ…「待て」」
薫は海翔の口に手を被せ言葉を遮った。
「次言ったらいくら海翔でもただじゃおかない」
薫はそう言って冷酷で周りを震え上がらせるような目つきで海翔を睨んだ。が、長年一緒にいる海翔には睨みが効かず口を塞いでいた薫の手を払い再び悲しそうな表情で薫を見つめる。
「悪い…」
海翔が小さい声でそう言うと薫はハッとしたのか我に返り小さく首を横にふった。しばらく二人の間に沈黙が流れ空気が重く感じる。すると海翔の目に『光輝』の制服が目に入った。
「なぁ薫。制服着てみて」
「え?いいけど」
薫はタンクトップ一枚にショートパンツとなりハンガーから制服を外し上から着替えた。
「海翔こんなんでいい?」
海翔は女なのに制服を凛々しく着こなしている薫をただ呆然と見つめていた。
「そんなに可笑しいか?」
薫はバツが悪そうに眉間に皺を寄せ海翔を見つめた。
「かっかっこいぃ~てかかわいぃ~!さすが薫なんでも似合う!」
海翔はそう言って薫を強く抱きしめた。
「ちょ…海翔…息…出来な…」
薫は息苦しそうに強く抱きしめている海翔の背中を力を振り絞って叩いた。
「あっごめん。いやぁそれにしてもほんと似合ってるわ。なにこの可愛さってか格好良さ。誘ってんのか?誘ってるよなうん…」
海翔はボソボソと呟いていたがあまりにも早すぎて薫には何を呟いているのか全くわからなかった。
「あのー海翔?」
「あっごめん」
薫の言葉で海翔はハッと我に返った。すると海翔はあることに気付く。
「髪どうすんの?」
「あーよしっ」
薫は何かを思いついたようにハサミを取り出し髪を切ろうとした。
「ちょ…薫ストップストップ!」
海翔は慌てて薫からハサミを取り上げた。
「何すんだよ」
薫はそう言って頬を膨らまし海翔を睨んだ。海翔はそんな薫を見つめ溜め息を吐く。
「何すんだじゃなくてさ薫女の子でしょ?髪は女の命なんだからそんな風に考えもなくハサミ使っちゃダメなの」
海翔の言葉に薫は眉間に皺を寄せ目線を反らした。
「だってめんどくさいじゃん」
「あんたホントにゴスロリ大好きな女の子?」
海翔は頭を抱え込んで再び溜め息を吐いた。
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