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「寮までは私の秘書兼校長が車で迎えにくるからね」
神子は薫の頭を撫でながら言った。
「えっ姉ちゃんは行かないの?」
「行ってあげたいのは山々なんだけどこれから姉妹提携を結んでいるパリ校の視察に行かなきゃいけないの」
どうりでやたら大きなキャリーバックが置いてあると思ったがこのためかと薫は一人納得した。
「理事長としても保護者としても入学式出れなくてごめんね」
神子は悲しそうな顔をして薫を再び抱きしめた。これは神子ならではのせめてものお詫びのつもりなんだろうと薫は解釈してあえて抵抗しない。俺に対してはなにもないのかと突っ込みたいところだが空気が読めるので海翔は何も言わずただ二人を見つめていた。
神子が家を出た後に迎えの車が来た。海翔は薫を玄関まで見送る。
「しばらく会えないけど元気でね」
「薫…」
海翔は今にも泣きそうな顔で薫を抱きしめた。薫は海翔の頭をポンポンと叩く。
「長期休業の時に出来るだけ帰るからね」
薫の言葉に海翔はただ黙って頷く。頷いたのを確認すると薫はにっこりと微笑み言った。
「女子校頑張ってね」
「へ?」
神子に何も聞かされてなかった海翔を薫は気の毒に思った。
「うぅんなんでもないじゃあ行って来る」
「え…ちょ…ちょっと薫今の何?」
慌てふためく海翔を置いて少し愉快に思いながら薫は手を振り車の方へ行った。
迎えに来た車は今までにも見たことのない立派な高級車だ。
-わおロールスロイス!-
初めて生で見るロールスロイスに薫のテンションは上がっていた。車の中からは20代前半辺りで黒いスーツを身に纏った男性が出てきた。
「お待たせしました薫様。どうぞ中にお入り下さい」
男性はドアを車の開け薫をエスコートする。紳士的な男性の雰囲気に薫は思わず呑み込まれそうだった。
走行中の車内に沈黙が流れる。
「あっあのっ!」
「申し遅れました。私は理事長の秘書兼『光輝』校長の斎藤千景と言います。運転手は近藤です」
まるで薫の言いたいことをわかっているかのように男性改め千景は話す。運転手はミラー越しに薫に軽く一礼した。
「寮に着いたら寮長室へ案内します。荷物はもうすでに部屋に運んであるので後は寮長の指示に従って下さいね」
千景は微笑みながら説明した。薫はただ黙って千景を見つめる。
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