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俺の中のアイツの第一印象は、兄貴の後ろに隠れて出て来ない臆病者。
そのくせ正義感だけは人一番強くて負けず嫌いだった。
いつからだ、アイツの周りに人が集まりだしたのは
『ほら、鶫…』
強い男であるために、と9割母さんの趣味で通わさられる道場の入門初日に、息子だよと紹介されたのは師範の背から押し出された少年。
その少年こそが鶫なのだが、生まれて初めて人や物を問わずに目を奪われた相手でもあった。
柔らかな金髪は光に反射してとても綺麗で、瞳は青かと思えば緑だったから不思議だなとよく見れば左右で違う色をしていた。
ぼーっと彼を見ていれば容姿とは反対に鋭い瞳に強く睨まれた。
『ジロジロ見てんじゃねぇよバーカ』
それだけを言い捨てて走り去って行く後ろ姿を見ながら「普通に日本語だ」なんて思ったりしていた気がする。
その後、小さい頃から父さんの後を継ぐ気でいたから勉強は人一倍していたのに、"バカ"と言われて頭にきた俺は全力で鶫を追い掛けて軽く小競り合いをした気がする。
さすがに師範の息子なだけあって勝てる訳が無く、気付いたら家のベッドの中にいた。
隣には何故か師範がいて、目が会うと柔らかく微笑まれた。
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