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「あっ、旨い」
「フフッ、そうでしょ?」
星は嬉しそうに彼―朝倉潤に言った。
きんぴらごぼうに鯖の塩焼、タコとキュウリの酢の物そしてワカメの味噌汁。ごく一般家庭で食べる和食だが、味はとても美味しい。
お世辞ではない、うちのカフェに訪れる人も星が作ったサンドイッチなどを誉めてくれる。
「それにしても…二人でカフェをやっているんですか?」
潤君が僕に質問してきた。
僕は平然を装って答えた。
「えぇ。もう6年やっていますよ」
「そうなんですか…。大変ですか?」
「いえ、好きでやっていることですし、星や近所の方も手伝ってくれますから」
落ち着け、僕。
内心そう語りながら彼に笑顔を見せながら言った。
「いいな。こんな優しい兄貴がいて」
「えっ…」
思わず声をあげてしまった。
「いや、俺一人っ子だったし、母親しかいなくていつも一人でいたからこんな兄貴が羨ましくて…すいません;いきなりこんな話をして;;」
「いえ、大丈夫です」
氷で心臓が刺された感じがした。
―――――――――――――
あっという間に時間が過ぎ、潤君が家に帰る頃になった。
「今日はありがとうございます」
「いえ、星を送ってきたもらったお礼ですよ」
「良かったらまた着てね」
「あぁ。…なんなら明日から大学一緒に行くか?」
「いいの?」
「うん。それにアレが聞きたいしね」
アレ?
「分かった。また明日」
「おう。お邪魔しました」
そう言って彼はこの家から後にした。
「星…」
「うん?」
「アレって?」
星は「あー…」とつぶやき、少し考えてから
「内緒♪」
ズキッ
「そう…。潤君はてっきり星の彼氏かと思ったよ」
「そんなわけないじゃん~。領兄は~」
星が僕には見せなかった顔を見せた。
それは―――女性の顔。
神は、僕を許さないのだろうか?
この恋を―――
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