9人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
着替終わって、下に降りるとテーブルに朝食が並べてあった。
「さぁ、食べようか」
領兄に言われた通りに、私たちはイスに座って朝食を食べ始めた。
―――――――――――
「今日、晩御飯遅くなってもいい?」
「いいけど…どうして?」
朝食を食べ終り、食後の珈琲を飲んでいる時に私は領兄に言った。
「友達が合コンするからって言われたの。大丈夫、すぐ帰るから」
「わかったけど…別に気にしなくていいよ」
「ダメ。たった二人しかいない家族なんだよ」
領兄の動きが一瞬止まった。
私たちの両親は6年前、交通事故で亡くなった。
当時、オープンを控えたこのお店と私たちを残した。高校三年生だった領兄はともかく、中学2年生だった私は、施設に保護されそうになった。
だけど、領兄が必死に止めた。領兄は夢にしていた弁護士を諦めて、このカフェを始めた。私を引き取った。
今考えれば、領兄があのような事をしなければ私は領兄の隣にいなかっただろう。
それに――――
「わかった。………その代わりちゃんと連絡して迎えに行くから」
「いいの?」
「うん。夜一人で帰らすの方が不安だし」
「ありがとう。そろそろ行くね」
「あっ、待って」
領兄は立ち上がって、私の頬を触った。
とても大事なものを触るかのように―――
「ほっぺにごはんついてたよ」
「あ、ありがとう。行ってきます」
「行ってらっしゃい」
私はその場から逃げるかのように去った。
とても他人になんかにこんな言えない。
唯一の肉親である領兄が―――
一人の男性に見えてしまうときがあるなんて――――
言えないよ…………
最初のコメントを投稿しよう!