プロローグ(憐)

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―――1O年前。 白い壁に囲まれた、孤島の刑務所。 暗闇に包まれたその一室。 「ウォォォォ!!!!」 突如、闇を引き裂く唸り声が聞こえる。 看守と思われる数人の悲鳴が上がり、同時に警報音が響き渡る。 暗闇だったそこは、今ではサーチライトが、まばゆい光を放っていた。 「脱獄だ!!」 「リューシタトモン!!ユダチウレン!!」 「死刑囚、サンプルA-56だ!!絶対に外に出すな!!」 「Go!!Go!!Go!!Go!!」 「命に変えてもここを通すな!!奴が外に出たらこの世は終わる!!」 いくつかの言語で飛び交う看守たちの怒号。しかし、断末魔の叫びが徐々にそれを上回ってゆく。 気付けば、白かった壁は鮮血に染まり、警報音すら止み… 先程までの騒音に打って変わって、今は静けさが支配していた。
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