第一話『当たり前の日常』

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現在時刻。 AM:2:37分 家の窓……電気ON 玄関の扉の前に立つ俺…。 バイトで疲れた体に喝を入れ直し、ドアノブに手を掛ける…。 ガチャリ…。 ノブの渇いた音が耳に刺さる。 「タダイマ…」 時間も時間なだけに(…理由はそれだけではないが)、出来る限り小さな声で玄関をくぐる。 ……「おっかえりぃー!!」 「はぁ」……と、更に溜め息をつく。 まさに近所迷惑+そして家内迷惑+んで俺、大迷惑。 靴を脱ぎ終るや否や、2階からドタドタとやかましい足音が聞こえだした。 その足音は今、俺のいる場所の目の前……階段からどんどんと近付いて来ている…。 マズイ!……俺は直感的に身を翻(ひるがえ)そうとする…… だが時既に遅し… 振り返るとそこには空中で手をクロスしつつ、満面の笑みで俺の喉元を狙う女の影。 くきょぺきっ! 普段はしないはずの音が俺の体内を駆け抜けた……。 そして膝から崩れ落ちる俺…プラスα呼吸困難。 華麗にもフライングクロスチョップを決めたその゙女"は、観客も居ないのに(当たり前だが)両手を挙げてガッツポーズを決め込む始末…。 「げほっ!なんでいつもいつもプロレス技なんだよ!…っこのアマぁ!!」※今言ってはイケナイ事を言いました。 「アマ?……ふ~ん、そ~ゆ~こと言っちゃうんだぁ…」 俯せでまだ膝のカクカクが治らない俺に、両手の指をポキポキいわせながら歩み寄る影…。 「うふふ……」 なんか舌なめずりしてるんですけど…? 俺の腰に座り込み、右手に右足、左手に左足を抱えて後ろへフルパワー! …そう。 海老固め…とかって技かな?たしか…。 などと冷静に解説している間にも俺の身体は刻一刻と破壊へと近付いて行く。 ギリギリギリ… 「いだだだ!ギブギブギブ!勘弁してくれ!姉ちゃん!」 俺は出来る限りの声を絞り出して叫んだ。
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