第一話『当たり前の日常』

3/8
前へ
/82ページ
次へ
「ふふん♪参ったか! あんたが私に口答えするなんて、カップラーメンにお湯入れて一分で食べようとするくらい早いのよ!」 相変わらず微妙な例え方… この仁王立ちで朝方にもかかわらずハッスルしてるのは“八神癒衣(やがみゆい)” 俺の四つ上、24才の姉貴だ…。 見ての通りのプロレス好き(する方) スリーサイズは自分が言うのもなんだが、かなりのスタイルだ……と思う。 (本人はヒ・ミ・ツ♪とか言ってるらしい) 髪は肩にかかるくらいのストレートの黒髪。 これで性格が最高なら世の中の男達は是が非でも物にしたいと思うくらいの美人……なんだと思う。 その“美人”の職場はOL(受付嬢)と言うのだから世の中とは間違いだらけである。 ヤクザさんがいちゃもん付けて来ても、「キャーー!」とか言わないに決まってるし、むしろ指先ひとつでダウンさせるくらいの実力の持ち主だし…。 全く人類とは末恐ろしい生き物である やっと技から解放された俺は、また機嫌が損なわれない内に癒衣姉に尋ねた… 「なんでまだ起きてんだ? 明日……ってゆーか今日も仕事だろ? 寝なくて良いのかよ…」 俺の言い分は当然である…。 普通の人間であれば、次の日が仕事ならばこんな時間には起きている訳が無い。 そりゃ日付が変わるまでまで飲んで行く客も良く見るが……。 癒衣姉を見る限り酔っている訳でも無いみたいだ…。 そんな考えを巡らせていると、俺の顔を見て気付いたのか、癒衣姉は笑顔で優しく俺に話しかけた…。 「私の可愛い弟の二十歳の誕生日なんだから、私くらいは祝ってあげないとね♪」 「凶慈…お誕生日、おめでと♪」 「あ、ありがとう…。」 俺は癒衣姉からまさかそんな言葉が出て来るとは思わず、少し声がうわずって返事してしまった。 俺が照れて俯いていると、それを見ていた癒衣姉は…。 「なーんて…ね♪」 ん?今“なーんて”って言ったか? 幸せ満喫中だが、疑問に思い癒衣姉を見上げる俺。 その瞬間、 目に入ったのは、 すんごいスピードで近付いて来る“腕” 腕?何故? そんな俺の疑問は、進行方向とは逆に進む“身体”と共に吹き飛んだ…。 またしても身体の中からありえない音が聞こえたのは言うまでも無いだろう “ラリアート”だったっけ? 吹き飛びながら出て来る技の名前…… トラウマになるぞ? 普通…。
/82ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加