第一話『当たり前の日常』

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待ちに待った至福の時…。 のはずが、一転。 湯舟は芯まで温まらないギリギリの絶妙な温度…。 肩まで浸かるが生ぬるさには変化は無い…むしろ冷たいくらいだ…。 湯舟のお湯がこんなにぬるくなったのも、元を正せば全て!あのプロレスオタクがいけないのだ。 俺はぬるいお湯で手早く頭を洗い流すと、近くにあった石鹸と垢擦りで体を洗う。 そして最後に桶一杯のお湯(ぬるま湯)で仕事の汚れと疲れを洗い流した。 「ぬるい……」 髪の先から滴り落ちる水滴を見つめながらしみじみ呟く…。 体が冷えない内に部屋に戻るため俺は、バスタオルで素早く全身を拭き、髪の毛の水分を取ると、バスタオルを首にかけてトランクスを履いた。 そこで俺はあることに気付いた……。 「パ、パンツしか無い…。」 全く迂闊だった…… 早く風呂に入りたい一心で、肝心の服とズボンを部屋に置き忘れて来てしまったのだ…。 どうする… どうする…! パンツ一丁でどれほど考えても部屋までほぼ0℃の道のりを、ぬくもりを感じたまま戻る術は今の俺には見つからなかった。 もう残された道は一つしか無い…
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