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これは一羽の玉兎が地球に逃亡する少し前…
昔の月の話…
「ハァ…ハァ…」
一羽の幼い月の兎が息を切らせながら一生懸命に足を前に出し、月の都を駆けていた。
---嫌われてしまった。
---自分はいらないんだ
まだ10代にも満たないような容姿をしたその兎にそんな不安がのしかかる。
その不安は走れば走るほど、その兎の中で確かな物になっていった。
その兎はそれでも走る。
走らないと、落ち着かないから…
無我夢中で走っている内に、人気のなく、暗い場所に出る。
どうやら、月の都の裏地に出たようだ。
と、その時
ドシンと音を立て、兎が何かにぶつかった。
「わっ、何だ!?
ガキの兎!?」
兎がぶつかった物体から、少年のような声が響く。
「うわぁぁぁぁん!」
兎はその少年らしき者にぶつかった拍子に今まで抑えてきた物が吹っ切れ、それにしがみついて泣いた。
「何だこの兎、突然泣き出した!」
兎がしがみついている少年は目の前で兎が泣きはじめ、困惑している。
「参ったな…兎は嫌いなのによ」
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