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──屋上から吹く風が私の頬を撫でる。
風の音に合わせてスカートがたなびくけれど、今の私にはそんなことは気にならない。
虚ろな目で自分の真下を見れば夜と言うこともあってか、足元は真っ暗で、まるで底がないように見える。
人気もない──何処までも静かな空間。
上を見れば満点の星空が輝いていた。
(明日はきっと晴れるわね。)
そんなどうでもいいことを考えながら、しかし、私は直ぐに前へと向き直った。
今から行うことに、私は後悔はしない。するくらいなら最初からここになど来はしない。
しかし、全く気掛かりがない訳でもない。
私の大好きなあの子達のこと──変わり果てた私の姿を見たらあの子達はどんな顔をするだろう。酷く辛そうな泣き顔が浮かんで、一瞬決心がぐらついたが、私は直ぐにまた足を踏みしめ首を振った。
(大丈夫。あの子達は強いから、きっと立ち直ってくれる。)
そう考えた。
もちろん、これが自分勝手な考えなのは分かっている。
都合のいい、我が儘な願望だということも分かっている──
でも……でもね?
(ごめんね。私、もう──疲れちゃったよ。)
裏切られ、傷付けられ、絶望し、夢も希望も何もかも全て無くしてしまった今の私には、この世界は辛すぎる。
自分勝手でごめんね、と何度もあの子達に繰り返しながら、私はフェンスからソッと手を離した。
(せめて、上手に飛べるといいけど──)
そう自嘲気味に笑うと、私は足にグッと力を込め、屋上の縁からその身を暗闇へと投げ出した。
この美しくも残酷な世界に別れを告げるために──。
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