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──「おはよう!零君!」
夏の日差しが降り注ぎ、草を青々と照らしている朝の河原。
丸い大きな黒目を嬉しそうに緩めて少女砂原渚は舗装された土手を走りながら、遠くにいる自分の幼なじみに大きく手を振った。
彼女の印象的な長い黒髪は、夏の日差しでキラキラと反射し、渚が走る度にピョコピョコと跳ねている。
そんな幼なじみの姿を一目見ると、今まで木の下に体を預けていた若者は、青い2つの双眼を穏やかに細めて、片手を挙げて笑った。
「おはようございます、渚。そんなに急ぐと転けますよ?」
声音の中に少しの心配を込めながら、少年零・バァンシュトラスは可笑しそうにそう注意した。
「こっ、転けたりしないよ?!もう…零君のイジワル~~ッ!」
そんな零に、走りついた渚は息を整えながら顔を真っ赤にして涙目で頬を膨らませた。
「すみません。つい──」
そんな渚にクスクスと笑いながら、零は謝罪の言葉を口にする。
日本人離れした銀の髪を無造作にかきあげて渚を見るその姿は、まるでどこかのモデルか俳優を思わせた。
それ程、零が端正な顔立ちをしている証拠である。
スッと通った鼻筋、少し鋭い鷹のように綺麗な青色の瞳、細い輪郭に白い肌。
(幼なじみの私でも時々見とれるくらいだもんね──ってそうじゃなかった!)
渚は見とれていた自分に1人ノリつっこみをいれながら、歩を進めつつ、更に恨めしそうに隣の零を見た。
「私って、そんな鈍臭そうに見えるの?」
すると、零は暫く考えてから満面の笑みを作ると答えた。
「鈍臭い……と言うより放っておけないんですよ。色々な意味で。」
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