演技と嘘の境界線

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そう言って指さされた少女は肩くらいあるストレートの黒髪と同じく漆黒を纏わせたような瞳が特徴的だった。 一重の少しつり上がった目や、陶器のように白い肌から、その姿はまるで日本人形を思わせる。 (うわっ……!可愛い!) まさか自分達と同じ学年にこんな美人がいたなんて──渚は思わず驚き、みとれて頬を染めた。 しかし、当の少女の方は大して自分に向けられる視線を注視していないのか、感情がまったく感じられない無表情で渚と零を交互に見つめていた。 何も感じていないような無機質な瞳……ところが、そんな亮子は渚をその目端に捉えた途端、一瞬だけ、その目を鋭く細めた。 (えっ?!いっ……今。) 渚は一瞬だけ感じた違和感に体を揺らした。 今、感じた視線には明らかに敵意が込められていたような──。 ところが次に見た時には亮子はまたあの無表情に戻っており、渚は『勘違いかな?』と首を傾げた。 「あの………亮子ちゃ~ん?」 一方、何も言わない亮子に、白鳥も冷や汗を滲ませている。 そうなって、ようやく亮子は口を開いた。 「どうも………」 たった一言。 それだけ言うと亮子は黙って一歩引いた。
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