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それはある日のことでした。
椎名 未稀(シイナ ミキ)が入院している病室にクラスの友達が大勢で遊びに来た日でした。
未稀は大分調子良くなってきていたので友達をたくさん呼んだのでした。
この時は誰も知らなかったのです。
これが、"嵐の前の静けさ"だったとは。
未稀の側に一緒にいた未稀の母親は突然担当医に呼び出されました。その場所は防音されている一室でした。
退院の話かと心を踊らせていたら、寂しげな顔をした医師の顔を見て一瞬嫌な予感がしました。
そして医師は口を開きました。
「落ち着いて聞いて下さい。どんなに手を施しても彼女には余命10年しかありません。」
未稀の母親も耳を疑いました。そんなわけない、だってあんなに笑顔で明るい子がそんなことあって良いわけないと自分に言い聞かせました。
「信じたくない気持ちも十分分かります。ですが、これをみて下さい。ここに小児ガンが発見されています。」
未稀の母親にレントゲン写真を見せると、見る見る悲しげな表情になっていきました。
間違いなくあったのです。
認めざるを得ない状況に陥ってしまいました。
「成人式は何とか迎えられるでしょうが…。それ以降は保証出来ません。」
すると未稀の母親は拳をぎりっと握りしめながらゆっくり口を開きました。
「何故……未稀なんです?何故未稀ばかりがこんな思いをしなくてはいけないんですか!?」
医師はその質問には答えられませんでした。
医師は頭を抱えながら口を開きます。
「彼女はかなりの未熟児だったんです。仕方ないでしょう。」
そういって、席から離れようとして立ちました。
部屋から出ていく前に、ボソッと言いました。
「未稀さんには貴方から言って下さい。お願いします。」
そう言ってからドアを閉める音が部屋に鳴り響きました。
暗黒の世界へつきおとされた気分でした。
未稀にどう言えば言いのか分からなくなってしまいました。
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