いち

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 正確な日にちは覚えていないが、僕はこの世に生まれて二ヶ月経ったころに生みの親と離れた。  後に「相棒」となる奴の母親に抱かれて、奴の家族が住むマンションの一室に連れて行かれた。  初めて見る光景を前に、ものすごく緊張していた。それをずっと抱いていてくれたのがその、相棒、だ。  甲斐甲斐しく僕の身の回りの世話をし、ときには粗相する僕を叱咤した、僕の生涯の相棒。周囲には「猫可愛がりだ」と言われていたらしいが、僕はそうは思っていない。  もう僕の前には現れないだろう、相棒。  今ごろ奴は何をしているのだろうか……。
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