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僕は気がつくと草の上にいた。
ここはどこだろう?
滅多に外には出ない。
家にいる方がいい。
飯には困らず、夏は涼しいし冬は暖かい。
なのに、僕は外にいた。
さっきまでは暖かい部屋にいたはずなのに―――そうだ、僕は無理やり連れ出されたのだ。
「だめ! レオ! 捨てないで! ねぇお母さん!!」
嫌がる僕の首根っこをつかみ、マンションの二階から放り出す。
すぐ下にあった植木がクッションになり、身体は無事だった。
ショックで一瞬記憶が飛んだだけか。
依然として、マンションの二階には二人がもみ合う姿が見えた。
というわけで、久しぶりの外出だった。感想は、最悪、だ。
ごくたまに、首輪にひもをつけて相棒が僕を外へ連れて行くことがある。
僕はもちろんそれが嫌で、相棒の肩に飛び乗る。
すると奴は僕を肩に乗せたままマンションを出て、あてもなくマンション群の周辺を歩く。
僕は相棒と同じ目線で旅をする。
だが、今は相棒の姿が見えない。
首輪にひももついていない。
何故だろう。
ぐるぐるぐるぐる、僕は歩き回る、低姿勢で。
尻尾は毛が逆立って太くなっている。
暗闇のなか、ここがどこなのか知るために、とりあえず動く。
本当は今すぐ家に戻りたいのだが、普段外へ出ていない僕は戻る術を知らない。
相棒も隣にいない。
"なぁ、志穂、どこにいるんだよ? 僕はここだ!"
いくら叫んでも、答える声はない。
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