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少し止まって休もうか、というときだった。
突然、ずさっ、という音が間近でして、僕は思わず飛びのいた。
「けっ」
黒い大きな影があった。身の危険を咄嗟に感じた。
"お前は誰? 志穂はどこにいる?"
「なんだお前」
僕の身体のすぐ横で、赤いスニーカーが草を蹴った。
飛び上がった土が降りかかる。
身震いした。
黒い影は去って行った。
何度となく叫ぶ。
だんだん声が枯れてきた。
僕はもう動いてこの事態を把握することは諦め、放り出された空き地の隅っこで丸まっていた。
声が届かないところに相棒はいる。
僕の声が奴に届くなら、飛んで来るはずだから。
あぁ、僕はこれからどうなるのだろう。
やけに冷静になれた自分が、少し嫌だった。
僕はここで死ぬのかな。
そんなの今まで考えたこともなかった。
まったく、僕の相棒はこんなときに何をやっているのだろう。
僕はこんな目に遭っているというのに。
早く来いよ。
僕のところに来いよ。
なぁ。
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