さん

3/4
前へ
/14ページ
次へ
 少し止まって休もうか、というときだった。  突然、ずさっ、という音が間近でして、僕は思わず飛びのいた。  「けっ」  黒い大きな影があった。身の危険を咄嗟に感じた。  "お前は誰? 志穂はどこにいる?"  「なんだお前」  僕の身体のすぐ横で、赤いスニーカーが草を蹴った。  飛び上がった土が降りかかる。  身震いした。  黒い影は去って行った。  何度となく叫ぶ。  だんだん声が枯れてきた。  僕はもう動いてこの事態を把握することは諦め、放り出された空き地の隅っこで丸まっていた。  声が届かないところに相棒はいる。  僕の声が奴に届くなら、飛んで来るはずだから。  あぁ、僕はこれからどうなるのだろう。  やけに冷静になれた自分が、少し嫌だった。  僕はここで死ぬのかな。  そんなの今まで考えたこともなかった。  まったく、僕の相棒はこんなときに何をやっているのだろう。  僕はこんな目に遭っているというのに。  早く来いよ。  僕のところに来いよ。  なぁ。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加