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君はいつも歌っている。
歌ってる時の君は楽しそう。
いつまでも聞いていられると思ったのに…。
―*―
『今日は雨か、桜も終わったのぅ…』
稚兎瀬は雨が降っているのを窓から見ていた。
そして、桜花の事も気になっていた。
昨日、桜花を尋ねて行ったら桜の木の後ろに寝ていた。
桜花は「気にしないで」と言っていた。
だが気にしない事など出来るはずもない。
『桜花は…大丈夫なんじゃろうか…そろそろ学校に行く準備するかのぅ。多分、俺は…。』
稚兎瀬は自分の気持ちに気付き、ちゃんと向き合うとしている。
黙々と準備を進め、終わると傘を片手に家を出た。
『あー…やっぱり桜散っとるのぅ…ん?丘の上の桜…何故無事なんじゃ?』
通学路をゆっくり桜を見ながら進んでいくと、雨に打たれているのにも関わらず、いつも通り丘の上にある桜は綺麗に咲き誇っていた。
「あら…稚兎瀬、今日は雨だから来ないと…思ってたけど」
綺麗に咲き誇っている桜の上には、傘もささずに座っている桜花がいた。
『桜花…聞くけど何故その桜は散ってないんじゃ?…傘持ってないんか?』
稚兎瀬は、軽く上を見ながら桜花に質問をする。
すると桜花は、ゆっくりと地面に着地して質問に答えた。
「傘は要らないよ、濡れない…から。この桜が咲き誇ってる理由は…もうすぐ分かる、よ」
稚兎瀬は今さらながらに桜花の喋り方に疑問を抱いた。
『そうか…なら次、今さらなんじゃが、失礼を承知で聞くが…上手く喋れんのか?』
「上手く…喋れない訳じゃない、けど…こんな風に喋る癖が、ついちゃったの」
桜花がゆっくりと理由を言うと、稚兎瀬は納得した。
『あ、そろそろ行くわ…また遅刻したらたまらんからのぅ』
稚兎瀬は『じゃあまた後で来るから』と言って小走りで行った。
「そろそろ…逢えなくなる、稚兎瀬…この出会いは、運命だと思ったのは…私だけみたい…。ダメだったのかな…遠い未来で逢えたら良いな…稚、兎瀬の卒業まで…この桜を咲かせ続けたかったな…。…ごめんね、稚兎、瀬」
桜花は、静かに呟くとその場に倒れた。
だが、その場には誰の姿もなくなっていた。
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